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男はそう言いながら、刀についた血を振り払い、鞘に納めてしまう 「何故?」 『逃げる必要が無くなったんだろうな、長州は全滅だし』 「…そうですか。…貴方は何故、私を斬らないのですか?」 『…さあな』 曖昧な発言をする男 桂には何故このような行動に出たのか理解出来なかった。 「……。」 『…この後、きっと幕府は長州に対して兵をだすだろう。その時は必ず高杉らに会いに行け、向こうもアンタの帰りを待っている筈だ。』 「貴方は…?」 『前世の記憶を継ぐ者。そして、後世に記憶を継ぐ者。ただそれだけだ』 「記憶?」 不思議な人だ。 桂は心の中でそう思った。 そして、桂もやっと刀を納めた。 『道は確保してある。そこを通って行け。』 「しかし!?それでは貴方が」 『俺が来た時には、もうこいつらはやられていた。まだ意識があった奴から桂に殺られた。と聞いた。そんなもんでいいだろ?』 「…ありがとうございます。」 こんな短時間でそこまで考えていたのか…そう考えると感心してしまう。 男はそっぽを向きそれから 『さっさと行けよ?』 「はい……ぁ…」 『…?』 「お名前は?」 名前を聞きたくなった。 いつか、恩返しをしたい。 そいつか、恩返しをしたい。 それを口実に名前を聞いた。 『…月影澪』 「本当にありがとうございました。」 桂は、また走った。 月影澪が作った、道を 振り返る事をせず 右手を胸に当てながら…
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