13人が本棚に入れています
本棚に追加
男はそう言いながら、刀についた血を振り払い、鞘に納めてしまう
「何故?」
『逃げる必要が無くなったんだろうな、長州は全滅だし』
「…そうですか。…貴方は何故、私を斬らないのですか?」
『…さあな』
曖昧な発言をする男
桂には何故このような行動に出たのか理解出来なかった。
「……。」
『…この後、きっと幕府は長州に対して兵をだすだろう。その時は必ず高杉らに会いに行け、向こうもアンタの帰りを待っている筈だ。』
「貴方は…?」
『前世の記憶を継ぐ者。そして、後世に記憶を継ぐ者。ただそれだけだ』
「記憶?」
不思議な人だ。
桂は心の中でそう思った。
そして、桂もやっと刀を納めた。
『道は確保してある。そこを通って行け。』
「しかし!?それでは貴方が」
『俺が来た時には、もうこいつらはやられていた。まだ意識があった奴から桂に殺られた。と聞いた。そんなもんでいいだろ?』
「…ありがとうございます。」
こんな短時間でそこまで考えていたのか…そう考えると感心してしまう。
男はそっぽを向きそれから
『さっさと行けよ?』
「はい……ぁ…」
『…?』
「お名前は?」
名前を聞きたくなった。
いつか、恩返しをしたい。
そいつか、恩返しをしたい。
それを口実に名前を聞いた。
『…月影澪』
「本当にありがとうございました。」
桂は、また走った。
月影澪が作った、道を
振り返る事をせず
右手を胸に当てながら…
最初のコメントを投稿しよう!