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ううん、と少し逡巡する小雪。
雪は見透かしたような笑みを浮かべて、妹の顔を覗き込み、どうしたの、と言う。
こう言う表情をした時の兄は苦手だ。
「わかったよ……」
小雪は溜め息を吐いて、にやにやと笑みを浮かべる雪に事のあらましを伝えた。
話を聞き終わって、
「ふぅむ」
と、雪は考え込むように呟く。
話の途中でも、このような、言葉の選択を迷っている仕草を取った事があった。
半裸のマッチョについて話した時だ。
そりゃ、筋肉ムキムキの半裸男に追い掛けられた、なんて言われたら言葉を迷うのも当然だろう。返答に困るったらない。
「ねえ、兄さんは何かその人達の事知らないの? 特にあのクロードって言う人は兄さんと同じ三年生なんだから……」
試しに小雪がそう訊くと、
「そうだ、小雪ちゃん、ちょっと付いて来てくれないかい。話はそこでしよう」
「え? ええっ。何、急に言ってるのっ。それに私は文芸部の見学に行く途中だって言った筈だよね!? 行ける筈が無いよ!!」
「小雪ちゃんこそ何を言っているんだい。文芸部はもう見学して来たじゃないか」
雪はさも当然のように、平然平素に微笑みながらそんな事を言ったのだった。
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