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え、この人は何を言っているんだろう。
小雪は唖然とした様子で兄を見上げる。
既に文芸部に行っているなんて事、荒唐無稽にも程がある。あの時行けた筈がない。
なにしろこの学校は複雑怪奇なものだから道に迷ったし、変な先輩方に遭遇していたのだ。地図だって全く役立たずだった。
そんな小雪の顔を見て、雪は大仰に手を広げて見せる。そして、言葉を続けた。
「小雪ちゃん自身が言った事だよ。狭い部屋に入ったら、怖い先輩が居た……って。その部屋、第三体育科倉庫が文芸部の部室なんだよ。よかったね、見学出来て」
第三体育科倉庫が文芸部の部室なんだよ。
その言葉が小雪の脳内で何度も反響する。
それはもう、嫌なぐらいに反響した。
「……説明お願いします。兄さん」
「うおっ!? 何その怖い目っ!?」
実の妹から、数歩遠ざかる雪。それ程までに小雪の目は据わっていたのであった。
「わかったから、とりあえず睨まないでくれよ。えーと、文学部は実はね……」
雪はゆっくりと語り始める。
文学部について。あの先輩について。
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