12人が本棚に入れています
本棚に追加
だが、雪は何時も浮かべている、意思の汲み取れないまるで道化のような軽薄で、そして柔らかな笑みを浮かべると、
「本が好きだからじゃないかな」
全く以て参考にならない答えだった。
いやもう本当に素晴らしいよね、信念を感じるね、雪はなんだか良く分からない事を呟きつつ、小雪の腕を取る。
「え? えええええええっ!?」
そして、そのまま歩き出した。疑問も解決しないまま会話を閉じられた小雪は、愕然として雪の腕力に従うままだった。
兄はずんずんと進んでいく。
先に行くその大きな背中を見ながら、小雪はふと昔の事を思い出していた。
兄は昔から本心が読めない人だった。皆の前では真摯で柔らかに振る舞っていたが、本当は荒唐無稽な人物だと思う。
少なくとも妹の前ではそうであった。
自分の前では、少しだけでも本音を見せてくれているのだと、小雪は幼き頃から優越感に似た嬉しさを覚えたものだ。
最初のコメントを投稿しよう!