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それを見届け、小雪は溜め息を吐く。
「早く文芸部へ行かないと……」
兄を追って、この学校へ入学した小雪であったが、まさかここまで複雑怪奇な構造をしているとは思わなかった。
学校見学は風邪で休んでしまったから。
その事が今となっては口惜しい。兄が付ききりで看病してくれたのは嬉しいけども、やっぱり学校見学に行けたなら、と思う。
「あ」
小雪の真横に位置する教室の扉が音を立てて開き、内から小柄な少女が出てきた。
高校生にしては背が低い。胸に付いた青色の徽章が無ければ中学生に見える程に。
小雪は一瞬、固まる。
だがその少女が目の前をよぎった時、
「あ、あの、ちょっと……」
思わず呼び止めていた。
上級生なら学校の構造に詳しい筈だから、文芸部の場所を聞こうと考えたのだ。
「…………」
だが、小柄の先輩はほんの刹那、小雪を一瞥しただけで無視して歩き出した。
あ、あれ……?
小雪は再び固まる。
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