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私の声が小さかったんだ。だから、聞こえなかっただけに違いないよね!
小雪は勇気を振り絞って、小さい背中に声を掛ける。今度はもっと大きな声で。
「あのっ! ちょっといいですかっ」
言った後に、声大き過ぎたかな、と小雪は思わず恥ずかしくなって赤面する。
「…………ちっ」
舌打ちされた。
「え、あ、あの……」
小雪は狼狽する。無視された上に今度はあからさまな舌打ちである。そこに込められた嫌悪感に、思い当たる節が無い。
この小さな先輩と自分は初対面の筈。
なのに何故、こんな態度を取られるのか。
「あのさ……」
気付くと、先輩は振り返っていた。
黒く濁った三白眼が小雪を突き刺す。
小雪は息を詰まらせ、先輩を見る。クラスの中で小柄な方である自分より背が低いのに、その威圧感は巨大であった。
そして、小さな先輩はその小さな口から、小雪が思いもしないような言葉を発した。
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