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「私に話し掛けないでくれるかな。……穢れるから。本当に迷惑。ああ、空気が汚れる。彼以外の人間なんて塵よ塵」
はい? なんですと?
言葉を失う小雪を尻目に、言い慣れたようにそんな発言をした先輩はフレアスカートを翻して、廊下の先へと消えて行った。
相模 小雪。
あんな言葉を今まで生きてきた十六年間、言われた事なんて皆無である。
それも見ず知らずの先輩に、なんて。
入学早々、作りたくもない思い出だ。
言ってしまえば、更にこの後、小雪の身に忘れる事の出来ない悲劇が舞い降りる事になるのだが、それはともかく。
「…………」
小雪は暫くそこから動けなかった。
文芸部へ行くと言う目的は、小さい先輩の台詞によって遥か彼方へぶっ飛んでいた。
そして、小雪が自我を取り戻した時には、彼女はいつの間にか中庭に立っていた。
あれ、瞬間移動でもしたか私。
なんて冗談をちょっと呟いてみる。
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