1.失くした存在 思いがけぬ再会 -真人-

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* 僕、多久馬真人【たくまなおと】は、 今の保護者である、多久馬総合病院の院長が手配した 浅間学院高等部の入学式へと出席していた。 家族が一緒に参列する中、 僕の付き添いは誰も居ない。 小学校の時も、中学校の時も 僕の入学式に微笑んでお祝いをくれた母さんは もう何処にもいないのだと、強く現実を突きつけられる人生の節目の時間。 今も目を閉じると、 暗闇の中でゆっくりと体が冷たくなっていく 母さんの体温が蘇って行く。 僕を私生児で産み仕事を掛け持ちしながら、 必死に育ててくれた大切な母さん。 そんな母さんが一番信頼を寄せていたのが、 今、僕が庇護を受ける、 多久馬総合病院の院長である、多久馬恭也【たくまきょうや】その人。 小学生の時に心臓を患って、 この病院に来た時の多久馬先生は、僕にとってのヒーロー。 僕を助けてくれた憧れの存在。 どうせなら……ずって憧れの存在のままで居させてくれたら、 僕はこんなにも苦しまなくて良かったのかもしれない。 この町に引き取られてすぐに憧れのヒーローが告げたのは、 ヒーローが僕が憎むべき母さんを苦しめた一人にした父親だったということ。 母さんがずっと言い続けていた『遠いところ』が、 別の家庭があったのと思い知る。 父親と名乗りを上げたその人によって、 僕は庇護され、母の名前である結城のの姓から、気が付いたら 多久馬と言うあの人の姓へと変化していた。 結城神楽【ゆうきかぐら】と言う名の母さんが天国に旅立って、 僕が迎えられたのは、あの人の今の家族。 あの人の奥さんである、多久馬昭乃【たくま あきの】は、 外面は優しいのに、内側には憎しみを宿した目で僕を蔑み続ける。 異母兄となった、多久馬勝也【たくま かつや】は あの人に何かを言われるたびに、僕の部屋に入り込んできては罵声をあげて 蹴り続ける。
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