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誠二郎はばつの悪そうな顔をして肩を落とす。春子は、いたずらを後悔する子供を見るように、少し呆れたような困った顔をして苦笑した。
「いいんですよ。こうして無事に帰ってきたのですから」
そう言って微笑む春子の姿は、駅で別れたあの日とまったく変わっていない。仏壇の写真のようなしわも白髪もなく、若い頃のままだった。
――これも夢の成せる技か。
ただ、少しいつもと違う気がする。しばらく考えて、春子が紅を塗っていることに気付いた。
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