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駅に入ると、中は大勢の人で埋め尽くされていた。夫と同じく戦争へ行く者、それを見送る家族、疎開する子供、親戚を訪ねる人――様々だ。
皮肉にも、汽車はもう駅に着いている。別れを惜しむ人々に残された時間があとわずかであることを暗に知らせているようだった。
「行ってくる」
「……体にはお気をつけて」
私の言葉を聞くや否や、夫はおかしそうにくつくつと笑い出した。私が不思議そうに見上げていると、夫はいつもと変わらない優しい笑みで言った。
「それは私が言おうと思っていたのに」
「まあ。ふふふ……」
それを聞いた私もおかしくなって、思わずくすくすと笑ってしまった。
「――春子」
「ふふっ。……はい」
「必ず帰ってくる」
「…………え?」
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