序章

2/4
118人が本棚に入れています
本棚に追加
/464ページ
  私は、彼女に処女を奪われた。 今日も大した何かも無く、 いつものように学校に行って、 いつものように授業を受けて、 いつものように帰ってきて、 彼女はいつものように吐いて。 何か変わったことも無く、 ありふれた普通の日だった。 彼女が何を考えていたのか、 私はよくわからないけど、 吐瀉物を慣れた手つきで片付けて、 私の部屋の扉を開けたら、 一緒に来た彼女に急に襲われた。 倒れ込む時に頭を打って、 かなり痛かった。 拒絶とか拒否とか、 出来たんだろうけど、 特にそれをする理由も見当たらなくて、 私は彼女を受け入れた。 見慣れた天井を、ぼんやりと眺める。 体が妙に熱っぽい。 痺れるような下腹部痛みと、 やけに現実的な汗の匂いが、 裏腹に現実味を無くしていた。 彼女は、部屋の隅で啜り泣いている。 「…ヨル?」 私はノロノロと起き上がって、 彼女の名前を呼んだ。 ヨルは、ビクッと体を震わせる。 「ぅ…あ…」 罪悪感からだろうその怯え方を、 可愛いと思ってしまったのは、 私が可笑しいからなのかな? ヨルが私の顔を見て、また俯く。 怒られると思っているのかな? そんなことしないのに。 私なんかの処女なら、 別に奪わなくてもあげたのに。 ヨルになら。 ヨルだから。  
/464ページ

最初のコメントを投稿しよう!