序章

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  私は、彼女に処女を奪われた。 今日も大した何かも無く、 いつものように学校に行って、 いつものように授業を受けて、 いつものように帰ってきて、 彼女はいつものように吐いて。 何か変わったことも無く、 ありふれた普通の日だった。 彼女が何を考えていたのか、 私はよくわからないけど、 吐瀉物を慣れた手つきで片付けて、 私の部屋の扉を開けたら、 一緒に来た彼女に急に襲われた。 倒れ込む時に頭を打って、 かなり痛かった。 拒絶とか拒否とか、 出来たんだろうけど、 特にそれをする理由も見当たらなくて、 私は彼女を受け入れた。 見慣れた天井を、ぼんやりと眺める。 体が妙に熱っぽい。 痺れるような下腹部痛みと、 やけに現実的な汗の匂いが、 裏腹に現実味を無くしていた。 彼女は、部屋の隅で啜り泣いている。 「…ヨル?」 私はノロノロと起き上がって、 彼女の名前を呼んだ。 ヨルは、ビクッと体を震わせる。 「ぅ…あ…」 罪悪感からだろうその怯え方を、 可愛いと思ってしまったのは、 私が可笑しいからなのかな? ヨルが私の顔を見て、また俯く。 怒られると思っているのかな? そんなことしないのに。 私なんかの処女なら、 別に奪わなくてもあげたのに。 ヨルになら。 ヨルだから。  
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