~プロローグ~

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人と魔族、20年の長きに渡り争われた二つの種族の争いの終焉となる戦場に、場違いと言うべき雰囲気を纏った青年が立っていた。   漆黒の闇よりなお黒いざんばら髪。 澄んだ湖面の如く透明感を持って、黒曜石の瞳。 それなりに整った、日に焼けた面。 貴族の正装をさせれば、さぞや良く似合っただろうが、彼は戦士の装束に身を包んでいた。 そう。彼は戦士。 人類の希望と期待される「勇者」の名を冠せられる、比類無き戦士である。   青年は、涼しげな気配を纏い、今もなお激戦が繰り広げられる、最前線へと視線を送っていた。その視線には、戦場でよく見られる戦特有の高揚感により、興奮や恐怖といった強い感情に支配された色は一切無く、冷静に戦いの推移を窺っていた。 その顔も、無表情にかたどられていた為、彼の胸中を窺い知る事も出来なかった…   「…どうなされましたか、勇者様」   誰もが青年に声をかけるのを憚るなか、一人の騎士が声をかけた…   「…俺を勇者と呼ばないでくれ。ランディウス」   戦場から視線を離し、騎士に視線を向け、青年は軽く苦笑を浮かべた…   「では貴方も私の事をランディと呼んで戴かねば、裕護さん」  
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