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僕ら二人が見上げる空は雲が薄くかかった満月が朧げに光を漏らすだけ。それは地表まで照らすことなく、漆黒の闇に落とし込んでいた。
かつて人々が過ごしていた都市は、今や瓦礫に埋もれた廃墟と化している。その中でかろうじて原形を留めている高層建築物の最上階。
その最上階を僕らはここをガーデンと呼んでいる。そこから見える景色を眺めるのが毎晩の日課のようなものだった。
眼下に拡がる廃墟。そこは長い年月をかけて森に侵食されてしまい、瓦礫と森が無秩序に混在している。一際高い巨大な建造物だけが月明かりを浴びることを許されているようだった。
「きれいだね」
君がポツリと呟いた。
君の視線は真っ直ぐに、くすんだガラスの向こう側、外の世界へと向けられていた。
僕はガラス越しに映る深い闇に吸い込まれそうな恐怖を覚えてしまう。
その闇からは小さな、儚い光の粒がふわり、ふわりと舞い上がっている。月へと吸い寄せられるようにあちらこちらからふわり、ふわりと舞い上がる。その光の粒は淡い光を放つ。まるで蛍の群棲でも見ているような、集まった光が作り出す景色は幻想的な世界を見せる。
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