鏡合わせ

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「解放してくれたら、もう辛いとは思わないから」 笑って言った彼女。 鏡に映る、優しい微笑みを浮かべた彼女。 僕は意味もわからないくせに、ひとつ頷いていた。 「君が救われるのなら」 彼女が救われるのなら、なんだってしてやろう。 「解放するには、どうしたら良い?」 尋ねた僕に、彼女は薄く微笑む。 「簡単よ。アナタと、私が、ひとつに、戻れば良いの」 おっとりと、そう笑う彼女。 僕はハッとして鏡の彼女を見た。 優しく微笑んでいた彼女は、まるで僕の気持ちを写したように驚いた顔をしてみせている。 隣に居る彼女が僕に手を伸ばしているのに、鏡にはその手さえ映らない。 何が起こっているのだろう。 茫然とそんなことを考えながらも、僕は彼女の手を振りほどくことはしなかった。 気持ちが、ざわついていく。 鼓動が速まって、呼吸が荒くなる。 彼女の手が僕の頬に触れた。 「ああ……、やっと、戻れる……」 妖しく響いたその声が最後、鏡の中の彼女の顔が、醜く歪んだ。 『誰が聖母だって言い出したんだろうね゙私゙はこんなに醜いのに』 ニヤリと、鏡の中の彼女が微笑んだ。 悪魔のような、ゾッとするような笑み。 瞬間、思い出した。 僕は私を切り離して、彼女のすべてを他人事のように見ていただけだったと。 彼女がいつも笑っていたのは、怒りを持つ僕が中に居ないから。 僕が彼女をいつも見ていたのは、僕が彼女自身だったから。 彼女を取り戻して、僕が消失した瞬間。 気付けば壊れたように笑いだしていた。 「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!」 そうだ、して欲しいことなんかひとつしかないじゃないか。 ゙私゙は、ただアイツらを壊したいだけ。 私を蔑みバカにして皮肉を溢すアイツらを、消し去りたいだけ。 次の日にはそれも叶うでしょう。 だってもう、枷は外れたのだから。 みんな、死ねばいい。  
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