卒業式前夜祭

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未だに慣れない長い階段を上って、汗をかきつつ、教室のドアを開けると、、、 俺は先ず、吃驚した。 「き、季冬さん!?」 そう、誰もいないと思っていた教室には季冬さんがいた。 季冬さん、そう、俺がずっと好きだった季冬さん。 「あ、木山君?どうしたの?」 「あ、いや、その、机の中に成績表忘れちゃって、、、」 「え?成績表?大事じゃん!よかったね、気付いて!とかいいながら私も忘れ物取り来たんだけどね」 季冬さんがにこにこしながら俺と話をしてくれている。 今年、同じクラスになって、俺が惚れてから、ほんとに話したことなんて少なかった。 「今日もほんと暑いよねー」 「そ、そうだよな、、、地球温暖化ぱねぇっす」 何言ってんだ、俺。 「ははっ、木山君面白!あ、そだ、これあげるよ」 そういって、季冬さんは俺に手を差し出した。 俺より一回り小さなその手には飴がのっていた。 「あ、ありがとう」 「いえいえ!」 夏らしい、ソーダ味の飴。 飴を受け取った時、俺は初めて季冬さんに触れた。 それだけでもう、倒れそうだ。 ・・・俺は思った。 折角やり直しが出来るんだ。 だったら当たって砕けてみてはどうだ? 後悔するよりマシじゃないか? 「じゃあ、私帰るね」 あ、、、 季冬さんは手を振りながらドアの方へ向かっていった。 このままじゃ、前と変わらない、、、 頑張れよ、俺!勇気だせ、馬鹿! 「あ、あの!き、季冬さん!!」 ぬわぁぁぁ!!呼び止めてしまったぁぁぁ!! 「ん?何?」 いつもクールキャラな俺が、ぬわぁぁぁ!!とか言ってるよ。 って今はそれどころじゃなくて! 「あ、あの、季冬さん、、、その、、、俺、、、ずっと前から季冬さんのこと見てました」 「え?」 言ってしまった、、、もうこうなったらだな、 「好きです、季冬さん、あなたのことが」 「・・・」 「・・・」 沈黙。 おい、やめてくれ、沈黙は。発狂したいなう。なうじゃねーよ。 単刀直入すぎるだろ、俺。 せめて、「夏休み予定ありますか?」とか、もっと遠回りしていけよ。 ・・・でも、俺はまっすぐ季冬さんを見た。 少しずつお互いの顔が高潮していくのがわかる。暑さのせいじゃない。 季冬さん、、、困らせてごめんね。 「木山君ありがとう、、、わたs、、、」
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