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しかし、それはものすごい重さで、身体ごと引っ張っても1ミリ程しか動かなかった。
それに、何処か下の方で小さな音がした気がして、未央は手を止めた。
(ん?なんの音だろ?―― ま、いいか。こんな事してられないんだった。さて、お仕事お仕事)
そう――
違法に奪われた物を、依頼を受けて回収する回収屋。
それが未央のもう一つの姿だ。
もう一度周囲を見まわす。
ターゲットのありそうな場所は直ぐに見つかった。
(これね)
壁際に置かれた大きな机に歩み寄り、一番下の引き出しをそっと引いて中をライトで照らす。
透明なプラスチックのケースに入ったその書類は、予想どうりそこにあった。
(標的確認。だけど、どうして鍵を掛けていないのかな?そんなに大切な物じゃないって事?だったら何故……)
少し考えてフッと笑う。
奪われた人にすればいつまでも取り戻したい物であっても、奪った側にとっては既にどうでも良い物という場合もあるのだから、こんな事があっても不思議ではないのだ。
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