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(ま、いいかそんな事。それよりさっさと終わらせちゃお)
思考に終止符をうち、プラスチックケースに手を伸ばす。
その瞬間、自分の手の甲に赤い光線が映ったのが目に入り、未央は「あっ――!」と声をあげた
途端にベルの音が鳴り響く。
「しまった!こういう仕掛けだったのね」
未央は素早くケースから書類を抜き取りポシェットに入れると、『書類は回収させていただきました』と書かれたカードを置いて、急いでベランダへ飛び出した。
来る時に通ったのとは逆の手順で庭に降りる。
あの大きな木に向かって走り出した未央の後ろで、バタバタと人の気配がした。
「いたぞ!あそこだ!」
「逃がすな捕まえろ!」
騒がしい声の直後、不意に響いた大きな破裂音に未央は耳を疑った。
それは生まれてこの方聞いた事も無い音だったが、紛れも無く銃声と思われ――
「嘘……こんな物一つにそこまでする?」
慌ててワイヤーを伝ってフェンスを越える。
門の方で車のエンジンの音がしている。
急いでローラースケートを履き、アスファルトを蹴って未央は暗闇の中へ走り出した。
…☆…
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