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すぐに黒い車が後ろにピタリとついて来た。
何が何だか分からない展開に、思わず大声を出す。
「何なんだよこれは!それにあんた誰なんだ !?どうして俺の車に!」
「そんなに立て続けに質問しないでよ!オジサン」
「オジ……俺はオジサンじゃない!まだ二十二だ!」
チラリと視線を向けると、少女は助手席に後ろ向きに座り外に目をやっていた。
「あらじゃあ私より五つも上だわ。やっぱりオジ――」
「お兄さんだろ !? だいたいな――」
「だったら名前教えて」
「何であんたに名前教えなきゃならないんだ!」
「ならいいわ、オジサンって呼ぶから」
このままでは、二十二歳にしてオジサンにされかねない。
そう判断した男は、視線を前に向けたまま仕方なく答えた。
「畜生!向坂千聖(さきさかちさと)だ」
「私は小野寺未央。高校三年よ。好きな花はパンジー。よろしく」
話しながら、握手をしようと手を伸ばしてくる。
千聖は思わず差し伸べようとした片手で、もう一度しっかりとハンドルを掴んだ。
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