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「今はそれどころじゃ無い!それより状況を説明してくれ!」
細い路地を右へ左へ走りながら叫んだ千聖に、少女が後ろを見つめたまま答える。
「じつはね、ピストル持った悪い奴に車で追われてるのよ」
「そんな事、始めから分かってる!」
「だったら訊かないでよ」
直線に入ったところで、後ろの車から黒い服の男が身を乗り出した。
「頭下げろ!」
バックミラーの中、こちらへ向かって真っ直ぐに伸ばされた手を目にした千聖の声とほぼ同時に、今度はリアウィンドウとフロントガラスに大きく皹が入った。
続けて体当たりして来る。
ガツンという派手な音と共にバランスを崩した車が、コンクリートの壁にガリガリとボディを擦り付ける。
「あぁあっ !! 俺の車――!くっそぉおおっ最悪だ!もう頭に来た!絶対赦すもんかっ !!」
声を上げた千聖が、アクセルを思いっ切り踏み込む。
タイヤを鳴らしながら海岸線を走る道路へ出ると、そのまま真っ直ぐにオレンジ色の街灯の下をフルスピードで港へ向かう。
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