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「―― 怪我はないか?」
港を後にして湾岸道路に戻ると、千聖が声を掛けた。
未央はシートに深く腰掛けて、静かに座っている。
さっきまでとは別人のように大人しくなり、まるで借りてきた猫だ。
「どうした?」
「なんだか力が抜けちゃって……。車ごと海におっこっちゃったかと思った」
返ってきた答えに千聖がフッと笑う。
自分の運転の腕前を知らないのだから、そう思われて当然だった。
「俺に任せろって言っただろ?」
「うん―― 任せて良かった」
未央はそう答えると、やっと微笑んだ。
それから思い出したように言葉を続けた。
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