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「なぁ、未央。ちょっとさ、公園で話さないか?」
頭を掻きながらボソッと告げた響を見て、小野寺未央(おのでらみお)は小さく肩を竦めて笑った。
未央は高校三年生。
ポニーテールに束ねた髪は少し茶色く、パチッとした黒目勝ちの瞳と、気にしている大きめの口は何処か日本人離れしている。
体格はやや小柄。
だが中学時代は体操部のエースだった事もあり、運動神経にはかなり自信があった。
父は未央がまだ物心もつかぬ頃亡くなり、残された母は今の父と再婚したものの未央が幼稚園の時に病気で亡くなった。
そして、二人目の父は一等航海士のため、一年のほとんどを海の上で過ごしている。
したがって、未央は4LDKの広いマンションに一人きりで暮らしていた。
その未央の“一応”ボーイフレンドの流石響(さすがひびき)は同級生。
身長は標準だがまあまあの美形で、結構もてたりする。
しかし負けず嫌いな性格が厄してか、女の子と付き合っても直ぐに喧嘩になり長続きした試しがなかった。
ところが惚れた弱みなのだろう。
未央にはいつも一方的に振り回され――
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