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昨日は誰もこの部屋には来ていない。
新聞の集金もピザ屋も、世話好きの管理人も―― そう、誰一人として。
だが、紛れも無くベッドの上には人間一人が存在していた。
「だ、誰だ?」
「ん―― おはよう。よく寝た……」
床に座ったまま問い掛けると、ムックリと起き上がり微笑み返してきたのは茶色い髪の少女。
(女……という事は、さっきの柔らかいのは……)
千聖は思わず手を見つめた。
「どうしたの?慌てて―― そっか、ビックリしたんだ。大丈夫、何もしてないから」
「何も―― えっ?君が?俺が?」
薄桃色の唇から吐き出された言葉に、完全にパニック状態になる。
「もちろん私がよ」
「じゃあ俺は?」
「覚えてないの?昨夜のこと。私の名前なんかも?」
大きな瞳でじっと見つめられて、千聖はゴクリと唾を飲んだ。
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