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それでも一応、響の要求は受け入れられたという事で――
取り敢えず、二人は薄暗い公園のベンチに腰掛ける事になった。
まずは話しのきっかけを作らなくてはならない。
ああでも無いこうでも無いと思考を巡らせた結果、響はさっき見た映画の話しをすることにした。
「映画、どうだった?」
「どうって?響はどう思ったの?」
「俺?」
逆に問い掛けられて考え、まずは当たり障りの無い返事をしておく。
「俺は―― まあまあだったかな……」
「私はとても面白かったわ」
「そ、そうだよな。面白かったよな」
「だけど……」
「だけど?」
「今一だった部分もあるわ。主人公が好きな女性に気持ちを打ち明けたとき――」
「うん、あの台詞ちょっと臭かったよな」
「台詞は良かったんだけど」
「臭くて良かった……」
「そのあとのヒロインの表情が良くなかったわ」
「涙流して喜んで……」
「笑ってたのが」
未央の大きな目で見つめられ、響は口元を歪めて黙り込んだ。
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