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「へえ、似合ってるじゃない」
私の隊服姿を見て、総ちゃんがそう褒めてくれた。
「じゃあ、今日は祇園まで巡察するから」
「はいっ」
初隊務だ!緊張するなあ~っ。
私は総ちゃんのすぐ後ろを歩きながら、町を見回す。
「壬生狼や」
「目ぇ合わせたらあかん」
……あからさまに嫌われてるね、新選組は。
ちょっとテンションが下がったけど、人斬り集団だもんね。
私も、普通の人なら近付きたくないかも。
ちらっと、総ちゃんの背中を見上げる。
……大きな背中だな。
ふと視線を下げると、裾に小さな黒い染みを見つけた。
洗濯をしても落ちなかったのかなあ。
黒…ってことは墨?でも隊服着て書き物はおかしいし、普通はこんな所に付かないよね?
「総ちゃん、この染みは?」
私が裾を摘んで訊ねると、総ちゃんは身体を捻ってそれを見る。
「ああ、この間斬り合いがあった時の返り血だよ。
まだ落ちてなかったんだね」
顔から血の気が引いた。
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