同居人1 マイウェイを行くおじいちゃん

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昔々、O家という家にそれはそれはマイウェイなおじいさんがいました。 おじいさんは果物が大好きで、 自分の家の墓所にある「すももの木」をこよなく愛しておりました。 すももが採れる季節になると、 おじいさんが採ってくるすももを家族みんなで喜んで食べておりました。 ところが、ある日おじいさんがすももの木の所へ行ってみると、なんとすももが誰かに盗られてしまっていました。 がっかりしたおじいさんは家に帰り、みんなにそのことを告げました。 家族のみんなもがっかりして、「来年また実がなるのを待つしかないね」と話しました。 しかし、次の年、すももの実がなることはありませんでした。 なぜなら、すももの木そのものが切られてしまったからです。 あのすももが盗られた翌日、おじいさんは「他人に盗られるくらいなら」とすももの木を自ら切ってしまいました。 自分がすももを食べられなくなるよりも、他人に自分の愛するすももを食べられる方がよっぽど悔しかったのです。 おじいちゃんにとってはしてやったりです。 その後、家族は来年食べることができると思っていたすももを食べることが叶わず、さらにがっかりすることになりました。 家族にとっては、すももが他人に盗られたことよりも、身内によってすももの木に終止符が打たれたことが何よりもびっくりすることでした。 家族よりもびっくりしたのはすももの木自身でしょう。 「あんなに愛してくれていたのに、何故切るの?!」 これがきっとすももの木がおじいさんに言いたかった最期の言葉でしょう。
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