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「ちはや、なんであんたはこんな裏山まで来てるのよ…」
裏山の斜面を登りながらあいりが言った。
「あははは…。実はね…」
この裏山はうちから15分くらい歩いた先にあるのだが、あまり人が近寄らないため、私は小さい時から一人になりたいときはここへ来ていたのだ。
夜はさすがに人気がなくて怖いのだが、日中はとても静かで穏やかな雰囲気なのだ。
初めてあの子猫に会ったとき、私はお母さんに叱られて、泣きながらこの裏山へと来たのだった。
「いくら、一人になれるからって…、なにもこんな、山に登らなくたって…」
ゼェゼェと息を切らしながら、あいりが呆れた声で言う。
私はよく来るからかそれほど息切れはしていない。
でも制服なので、汚れないように気をつけながらゆっくり登る。ちら、と、あいりを見ると「疲れた~」「最悪…」とか言いながら、同じように制服が汚れないように気にしながらついてくる。
口ではそう言いつつも、顔は怒ってるふうではなかった。疲れてはいるようだが…
裏山とはいっても、実際は山というより小高い丘という感じだ。でも舗装された道などがないため、土の斜面を登らなくてはならないのだ。
斜面を10分ほど登ると、開けた原っぱへと出た。
「あ~!!疲れた!」
立ったまま膝に手を置き、肩で息をしながらあいりが言った。
「大丈夫?」と私が声をかけると、顔をあげてニッと笑い「だ、大丈夫」とこたえた。「ちはや、あんたすごいわ…」
フウッと息を吐きながら、あいりが言った。
その時、原っぱを風がザァーッと通り抜けた。
「ここに、子猫がいるの?」
あいりの言葉に、私は頷く。
「でも、いつもいるわけじゃないから…。もしかしたら…いないかも…」
「え~!?こんなに頑張って登ってきたのに、いなかったら超ショックなんだけど!」
あいりがガックリうなだれながら言った。
「まだ、いるかいないかは分からないよ。探してみる。」ちょっと焦りながら私は言い、辺りを見渡した。
原っぱは私の膝丈くらいの草が生えているため、子猫の姿は隠れてしまう。
よく見掛ける、ちょっと大きめの木のほうへと近付いた。
その木の根本、白いものがチラッと見えた。
あの子猫だ…!
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