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木の根本で小さく丸まっている子猫がいた。寝ているようだ…。
なんとなく起こすのは気が引けて、あいりにシーッと合図をし、おいでと手招きした。
私の合図を理解してくれたのか、あいりは静かにこっちへと来てくれた。
あそこ、と私が指差すと、あいりの目がキラキラと輝く。あぁ、本当に動物が好きなんだなと感じた。
私達は起こさないようにその子猫を見つめていた。
けれど視線を感じたのだろうか、ふとパチリと目をあけた。
一瞬ビクッとしてサッと立ち上がったのだが、私に気付くと私のほうへと近付きスリスリと体をこすりつけてきた。
「気持ち良く寝てたのに、起こしちゃったね。ごめんね。」子猫に撫でながら声をかけると、いつものように可愛らしい声で「にゃーん」と鳴いた。
そんな子猫を見て、あいりが「可愛い!抱っこしても大丈夫!?」と聞いてきた。
「多分、大丈夫だと思う」
私はそっと小さな体を抱き上げて、あいりへと渡した。
あいりは猫を飼っていて、さすがに上手に抱っこする。
子猫も全く嫌がらずにおとなしく抱っこされていた。
「可愛いなぁ~。やっぱり子猫っていいよね~」
と言いながら鼻の頭を撫でている。子猫は気持ち良さそうに目を閉じた。
ひとしきり子猫と遊んだあと、時計がわりの携帯を制服の胸ポケットから出し時間を見た。もうすぐ5時になりそうだった。
「もうこんな時間!?帰らなきゃ…」
私の言葉に、あいりも立ち上がる。
私達の帰る雰囲気を感じたのか、子猫は立ち上がりいつもと同じく、さっき寝ていた木の裏の方へと歩いていった。
「あの子、いつもあそこへ帰って行くんだ…。」
ポツリと私はつぶやいた。
「あの先に、あの子のお家があるのかな」
私の言葉に、あいりは突然持っていたカバンを地面に置いた。そして子猫が行った方へと歩み寄る。
きょとんとしてる私の方を見て、手で「来て」と合図した。
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