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「あの先に、あの子猫の秘密、あるかもしれないよ。」
小さくあいりが言った。
私が「?」という顔であいりを見る。
「ちはや、言ったでしょ。あの子猫はずっと子猫のままだって。そんなことは実際は絶対にありえない…。でも、今日私が見たのも確かに子猫だった。ということは、きっとあの子猫の行く先に秘密があると思う。」
そろりと歩きながら、小さな声であいりが言った。
確かに、よくよく考えてみるとあいりの言ってることはもっともだった。
きっとなにかあるはずだ。
ちょっとワクワクしながら、私とあいりは子猫を見失わないように少し距離を取りつつ追いかけた。
子猫は、私達が帰ったと思ってるのか、全く振り向かずに歩いていく。
しばらく歩くと、突然大きな木が現れた。その根本に子猫がいるのに気付き、私達は慌てて周りの木々の裏へと隠れた。
そっと子猫を見る。そして、子猫の目の前にそびえる木へと視線を移した。
今まで見たこともないような大きな木…。
私達が住んでいるここ沖縄にもガジュマルという大木はあるのだが、それよりも遥かに大きく立派だった。雰囲気はガジュマルに似ているので、もしかしたら、その木はガジュマルなのかもしれない。
そんなことをぼんやり考えてると、あいりが「あの子、なにしてるんだろ…」と言ったので再び子猫へと視線を戻した。
子猫は木の根本の前でしばらく座っていたが、ふと立ち上がると前足で根本をトントンと叩いた。
すると、今まで何もなかった木の根本にぽっかりと穴があいたのだった。
子猫はその中へとするりと入っていく。
私はポカンと見ていたのだが、あいりはやや間をおいて、その中に入って行こうとした。
「ちょ…、ちょっと待って!」
慌ててあいりをとめようと駆け寄る。
頭を突っ込んでいるあいりのスカートを引っ張った。
「あいり!危ないって!」
小声で叫ぶ。
「いくらなんでも、今のはおかしいでしょ!?何もなかったのに、急に穴があいたんだよ!?絶対行かない方がいいって!」
必死だった。
嫌な予感がする。この先に行ってはダメだって、そんな感じがする。
あいりのスカートを握ってる手にぐっと力を入れた。
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