異世界へ…

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「ね…猫がしゃべった!!」 私とあいりがほぼ同時に言った。 けれど、白い子猫は私達の言葉には何も反応せず、私達の方へ駆けてきたと思ったら横をすり抜けた。 私達も子猫を視線で追う。 「ま、待つにゃ!!ダメにゃ!!」 子猫は私達が出てきた穴へとそう叫びながら駆け寄ったのだが、駆け寄るとほぼ同時に穴は消えた。 私達も子猫も、無言で穴が消えるのをただただ見てることしか出来なかった。 子猫はガックリうなだれていたが、私達はその時穴なんてどうでもよくなっていた。 目の前で子猫がしゃべったことのほうが重大だったのだ。 「えっと…。君、しゃべれるんだね。」 どう声をかけたらいいのか分からず、とりあえずそう声をかけた。 チラッとあいりの方を見ると、明らかに興奮しているのがわかった。 けれど子猫は私の問いには答えず 「どうしたらいいのにゃ…」とつぶやいていた。 あまりの落ち込みぶりに、私は思わず子猫の頭を撫でた。 「あ…、あの…、勝手に後をつけたのは…その…本当にごめんね…」 なんとなく、いけないことをしたような気持ちになり謝った。 子猫は涙目になりながら、私を見上げた。 うっ……!!めちゃめちゃ可愛い…!! 後ろから子猫を覗き込んでたあいりも小さく「うわっ、超可愛い!」と声をもらした。 「ど…どうするにゃ…」 今に泣き出しそうな顔で子猫が言った。 言ってる意味が分からず、私達は首を傾げる。 「どうするって…何が?」 「空間をつなぐ穴が、消えちゃったにゃ…」 相変わらず涙目に涙声だった。 けれど、私達には何を言ってるのかさっぱり分からなかった。 だって、ここはさっき私達がいた裏山だと思っていたから… 「今、君たちが通ってきたのは空間をつなぐ穴にゃ…。」 【空間をつなぐ穴】…? 聞き慣れない言葉に、私とあいりが首を傾げた。 そんな私達を見て、私達が何も理解してないと子猫は分かったようだった。 「ここは、君たちの世界じゃないにゃ。」 一言、そう言った。
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