OVER DRIVE

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「Hello?」ってかなり不安げな声で、でも落ち着いた顔取り繕って玄関に立ってた。 ちっちゃい体にでっかい荷物。 その声と存在の小ささに、いつも賑やかな談話室で気付けたのはまさに奇跡に近かった。 最初はただのアジア系かと思ったが、マサドラに迎えられて歩いてくる彼女が俺の脇を通った時に一言、「えっと…」とか言うもんだから、バッチリ日本人だって分かった。 これからアイツも俺みたいに色んな衝撃受けて、そして、毎日ワクワク過ごすんだろうな… なんて、何気なく思ってた。 なんとなく、人生の先輩ぶってたところもあった。 それなのに、アイツはまったく変わらなかった。 キョロキョロしながらいつも1人で大学の荷物抱えて談話室を突っ切ってる毎日。 声を掛けてやろうかと思ったこともあった。 でも、そのよそよそしいアイツの態度が、あからさまに典型的な日本人ってカンジでかなりナンセンスに思えたのでやめた。 俺から言わせれば、「せっかくNYまで来て、消極的でいるんじゃ意味ねぇだろ?」って感じ。 正直、最初は見ててイライラした。
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