自由を生きる街

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バタンッ。 傘を持っていなかったので、小走りで帰ってきた。 泥落としのマットで、丁寧に靴についた水を落とす。 …こんなことしてるの、私だけ 未だに慣れない我が家。 …いや、『家』と呼ぶにはいささか騒がしすぎるかもしれない。 玄関から繋がってる談話室からは、テレビの音と、誰かが弾くギターと、レコードと、笑い声と…… とにかく、音を出す全てのものが稼働していて、聞き分けなんてできない。 『MASCARON』 小さなアパートというか寮というか… とにかく、ちょっと古めかしく、部屋が何個もある家。 色んな国籍の若者が、それぞれの1室を借りて住んでいる。 いわゆる、ルームシェアー。 ここには私のように、大学留学の為に住んでいる者や、仕事を求めて住み込んでいる者、そして最先端の地で華々しいデビューを目指すアーティストの卵たちがぎゅうぎゅうに押し込められて、生活を共にしている。
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