自由を生きる街

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「おかえり、ミソメ」 ここの管理人兼、みんなの保護者でもあるマサドラが、こっそり入ってきた私にキッチンから声をかける。 体格も面倒見もいい40代後半の白人女性。 私の親戚が昔ここでお世話になった繋がりで、私が入るのも快く承諾してくれた優しい人。 彼女が作るハンバーグは、お店のよりも断然美味しい。 まるで動物園のような談話室。 その中でも私に声を掛けてくれる人達に軽く言葉を返しながら、マサドラの方へ歩いてゆく。 「学校には慣れたかい?…あらあら、びしょ濡れじゃない」 そばにあったタオルでグシグシ、私の頭を乱暴に拭き始めるマサドラ ただでさえクルクルカールしている髪が、さらにヒドいことになる。 それを見て、近くにいた白人の男の子が笑っているのがわかった。 「大丈夫よ。ありがとう」 「部屋や皆を汚さないうちに、着替えなきゃ」と言い落として、私は奥の廊下へと向かった。 この廊下が…玄関から談話室を通らずに繋がっていたらなら、この家には大満足だと、たまに思う。
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