―殺人―

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育て方を間違えた? 聞き間違えたかと思った。 お前は何もしてない ただ自分が勉強したくて勉強しただけで お前はただまわりに自慢ばかりしていただけだろ 言いたかったが言うより先に体が動いた。 心のどこかで『殺せ』と誰かが言った。 とても悲しそうで憎しみをもったような声だった。 一番最初に浮かんだ凶器が鉄製のバットだった。 誕生日に貰ったプレゼントだけどまだ一度も使ったことがなく、とても綺麗だった。 部屋から鉄製のバットを持ってきて持ち上げたときの父の顔は 恐怖と驚きでぐちゃぐちゃになっていた気がする。 一気にバットを振り落とし父の顔がもっとぐちゃぐちゃになっていったのを覚えてる。 ついさっきの出来事だ。 バットを持ち上げては振り落とすのを何度か繰り替えした。 心では『死ね』『早く死ね』としか思っていなかった。 父は動かなくなってしまった。 誕生日なのに過去最低な日だったであろう。 でも頼は少しすっきりしていた。
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