―夢―

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昔から『頼(らい)』はまわりから褒められて育った。 成績は優秀で穏やかで情けが深く、誠実でとても優しかった。 彼は皆に好かれていた。親も自慢の息子だとまわりに言い触らした。 でも頼はいつもなにか不満を感じていた。 自分にはない何かが欲しいとわがままを言うこともあったが、親はそれをすべて聞かなかったことにしていた。 「お前にはなにもいらないのさ。もう完璧なんだから。」 なにもいらない? 何が完璧? そんなの俺が決めることだ。 初めて親が嫌いになった。 自分の人生を親に振り回されたくない 自分の人生を親のために果たしたくない 自分の人生を制限されたくない そんな思いだけが毎日感じられた。 自由になりたいと考えたこともあった。 家出をしても行く所がない。 助けを求めてもだれも助けてはくれないだろう。 早く自立して自由になるしかない。 誰の助けもいらない。 自分独りで生きていきたい。 それが夢になる。
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