0場 青い鳥

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音が、鳴った。 いつだってその曲が鳴っていた。 ポロンとピアノの弦が弾けて。少女は気がつけばその音に包まれていて。 そして少女は白い鍵盤の上で踊る綺麗な指に見とれながら、眠りについた。 ――その曲の名前は? 少女がまどろみの中そう問いかけると、音を奏でる少年は優しく微笑んだ。指は止めず、美しい旋律を奏でながら。 そして少年は少し思案してから、これがいいと一人で頷いた。 ポロン。 最後の音が、部屋に反響する。 部屋の壁に、天井に乱反射するように響く音。そして残響。 少年は少女の頭を優しく撫でた。 ――この曲の名前は。 『青い鳥』 いつか一緒に探すと約束した、幸せの鳥。
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