プロローグ -Prologue-

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―おおよそ30分後 「ほらよ」 結局少女は近くのコンビニまで付いて来てしまったので、仕方なくジュースを奢ることにした。 「ありがと…」 「それ飲んだら家に帰れ」 手渡した缶ジュースを飲む少女にそう忠告しつつ、俺も飲み始める。 「私…」 「んあ?」 その後、数分間の沈黙を経て少女は口を開いた。 「私には帰る場所がないから…」 「家出でもしたのか?」 少女は首を横に振ると、俯きながら自分の事を話し始める。 「アストレイヤー(星導師)の私には使命を全うする義務があるから…。それを終えるまでは帰るわけにはいかないの。」 「…?? 明日…何だ?明日に何かあるのか?」 「違う、アストレイヤー。星導師の事。この世界の調律者の総称」 「いや…。そう言われても、全く意味が分からん」 とうとう俺は少女を見る目が、心配から哀れみに変わった。 なんだこの痛い子は…。厨二病にも程があるだろ。 内心そう思っている俺をよそに、少女の話は続く。 「アストレイヤーは私以外にも複数存在してる。そして各々契約者を見出し、その契約者と共に次元の歪みを修正していくのが主な仕事」 「次元の歪み?契約者?益々胡散臭くなったな…」 「勿論私たちもタダで契約して貰うつもりはないよ。願いを一つ叶えて納得して貰った上で、契約して貰うの。契約者にはそれだけの危険が伴うことになるから」 あくまで“願いを一つ叶える”という所を強調して話す少女。 「ふーん…。なら俺を今すぐ総理大臣にしてくれるのか?世の中全ての女性が俺だけを見るようには出来るのか?死んだ人間を生き返らせられるのか?」 俺は少し冗談混じりで、少女に要望を言う。 「え…!?いや、何でも叶えられると言う意味じゃなくて、ごめんなさい。私が叶えられる範囲でという意味だから」 すると、想定通りの反応に拓也は思わず吹いてしまう。 「でも、億万長者になりたいとかだったら…」 「金なんざ興味ねぇよ。新手の宗教勧誘か?下らねぇ寝言は寝て言え。んでもって、もう帰れ」 「……」 そして止めの一撃に、少女は黙り込んでしまった。
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