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「あの程度で俺を呼び出すとは、困った女だ。で、そいつらは何だ?」
辰巳はそう言って俺とルナを睨みつける。
「右の女の子がルナ。一応私の同期生よ。男の方は契約者…ではないようね。ただの通りすがりかしら」
ただの通りすがりってなんだよ…。
「ルナ…あなたね。さっきも言った通り、戦いはもう始まっているのよ?いつまでも候補生じゃいられないんだから、早く契約者を見付けなさいよ」
「う、うん。分かってるよ。だから私、ちゃんと探してるから。もうちょっとだけ待ってくれるかな?」
そんな心のつぶやきをよそに、俺には理解出来ない会話が始まる。
「あの、俺関係ないなら帰っても良いか…?」
内心不安と怒りが入り交じりながらも、これ以上関わるべきではないと判断した俺は妥当な結論に至る。
「ええ、良いわよ。さよなら」
その質問にあっさりと笑顔で答えるアイシス。しかし、何かがおかしい。
「あ、あぁ…それじゃあ…」
「あ…」
俺はそんな一抹の不安を抱えながらもその場から立ち去ろうとする。何やらルナが悲しそうな目で俺を見つめてくるがそんな事にいちいち構っていられない。
明日には警察がわんさか来ることだろう。容疑者に仕立て上げられでもしたらたまったもんじゃない。
「さっさとお逝きなさい」
しかし、ここで俺の感じた不安が的中してしまう。瞬間、アイシスは細いワイヤーのような物を俺に巻き付けると、そのまま空高く舞わせる。
「え…っ!?お、おぉ!!?」
一瞬…。
ほんの一瞬だけ俺は状況が理解出来なかったが、即座に悟った。
この感覚…、重力に逆らう感じと後に来る衝撃の強さときたら…。あの時と同じだ。
あぁ、今度こそ死ぬわな。
俺の人生なんてもんは、全くつまらねぇもんだったぜ。
落ちる瞬間から地面に叩き付けられるまでの間は全ての事がスローモーションに感じた。
そして、今までの記憶の一部が断片的に現れては消えてゆく。
これが走馬燈って奴か。
あの女…最後まで笑ってやがる。
そしてアイシスの笑顔を認めた刹那…
俺の意識は途切れた。
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