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辺銀との出会いは、
衝撃的!
という感じでもなかったが、
わぁ。
ぐらいの驚きがあった。
「あの。辺銀、君のお宅ですか。」
ピーンポーンとなるやつを押してから人間が出てくるのには、酷く時間がかかった。
「待つことが、大切ですよ。」
医者にそう言われていたので、自分が待てる範囲で待った。
時間にすると三分ぐらい。
いい加減料理の入った皿が重く
下に置いた時に玄関が空いた。
「あっ」
初対面の人間に会う時、第一印象がとても大事になってくる。
と誰かが言っていたのを思い出す。
「六篇さんですか?」
「はい。六篇です。」
こちらはまだ料理の皿を拾い上げるために腰を曲げ、長座体前屈をしているかのような恰好をしているにも関わらず、
辺銀康人は私の腰の上をめがけて声を飛ばした。
そのため図に表しでもしたら、間抜けと名付けられることになるのだろう。
「辺銀さんですか?」
「辺銀です。」
せっかくなので、その体制のままやり取りしてみる。
「じゃあ。中に入ってください。」
体制に関して突っ込まれることもなく、部屋の中へと言われてしまった。
このまま長座体前屈をしていても、何も言わないんだろうな。
と諦めて顔を上げるとそこにはもう辺銀はいなかった。
まさかあの体制を無視され続けるとは。
ここでまず、
わぁ
と驚いた。
そして、案外自分と気の合う人間かも知れないと思った。
「あの爺さんが紹介してくる人間なんてろくでなしだと思ってましたけど、そうでもなさそうですね。」
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