1、辺銀康人

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ビン底メガネをかけた短髪の冴えない青年、辺銀康人。 生活費は日本国民の皆様の税金で賄われ、図書館から歩くこと約三分の家に一人暮らし。 特に何をこなすこともなく、自分は何のために生きるんだ、なんて考えることもない。 只々平凡な人間だ。 辺銀本人に言わせたのなら。 私も含め、普通の身体に生まれなんてことのない家庭環境を送ってきた人間から言わせれば、彼ほど平凡でない人間はいないはずなのに。 辺銀曰く 「それは先生たちの方が非平凡なんです。僕が生きてきた十九年間そしてこれから生きる数十年間、僕の日常こそが平凡であり先生たちの日常こそが、非平凡なんですよ。」 と言うことになるらしい。さらに饒舌な彼ならば続けて言うだろう。 「そもそも、平凡なんて言葉がおかしいんですよ。人の毎日なんてそれぞれ違う。個人差のようなものがあるはずなのに、それを一貫して平凡という言葉で括ってしまうなんて。アフリカ人の言うところの平凡と日本人の言うところの平凡が全く異なることと同じように、自分の平凡と隣人の平凡が違うことは当り前のことなんです。だから先生の考える平凡と、僕の考える平凡、そして見知らぬ誰かさんの平凡はみんな違くなるわけですから、結果的にいうのなら、みんな非平凡的毎日を送っているって考えるのが妥当なんです。」 そんな、頭がこんがらがってしまうよう話を彼はするかもしれない。 いや、八割の確率でするだろう。
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