2,時間の間隔を失わないために

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「先生。人が目の前にいるのにボーとするのは善くないですよ。」 まだ法的には子供とみなされた辺銀は、私の前で機嫌が悪そうに座っていた。 「よく、私が呆けているとわかったね。」 「それぐらいはわかりますよ。どんなに僕が目の前で動いていても、先生は全く動かないし、何も尋ねてこない。そういう時、先生は決まってぼーっとしています。」 「動いてた?」 「動きました。阿保のごとくバタバタと。」 「全く気付かなかった。」 いつものように彼の三食を持ってきて、彼と一緒に食事をして彼と食後に話をする。 私が日付感覚を失わないための唯一の決まり。 「えーと…何の話してたんだっけ。」 「昨日とても美しい本に出会ったんですって話ですよ。」 「あぁ、美しい本ね。美しい本。」 聞いてましたよ。えぇ、聞いてましたとも。
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