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一年程前。
まだ私が一人暮らしをし始めて半年ぐらいのころ。
辺銀と会うきっかけはひょんな所にあった。
「六篇(ろっぺん)さん。僕は大変いいことを思いつきました。」
医者が診察を終えるなり開口一番そんなことを言った。
「何か、私の病状に関わることなのですか?」
「あなたの病状の解決策を思いついたんです。」
「治療法でなく、解決策。」
「えぇ。そうですとも。」
頭に白髪をぽやぽやと生やした精神外科医が、
そんなことを言うもんだから私は、そのぽやぽやを抜いてやろうかと考えた。
「本当にいい考えだなぁ。今年一番の思いつきだ。」
「その解決策って一体何なんですか。」
「あなたが、毎日三食、近所の十九の青年に届けて一緒に食べてやる。これこそが解決策。」
「はぁ?」
ぽやぽやなんて抜く前に帰ってやろうと腰を上げ後ろを振り向くと、
若く綺麗な看護師さんがしっかり扉の前に立っていた。
「まぁ、聞きなさいよ。」
「なんですか、爺様。」
そう心の中で呟いたつもりだったが、
医者の後ろの看護師が口元を歪めたところを見ると、実際に口に出してしまっていたようだ。
「六篇さん、あんたは日光を浴びなかったから体調がおかしいだけだ。定期的に日の下に出るとかして暗い部屋に閉じこもるのをやめりゃあいい。体内時計がおかしくなってるんですよ。」
先週から体が不調を訴えていたため、今日になって家から一番近くの病院に来てみた。
精神科だから、体の不調の原因が分かるのか不安だったが、とりあえずは来て正解だった。
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