夏、日照り、竹林にて

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「サテサテ……なんか嫌な思い出ばかり思い出すんですけど」 頭をふと過ぎった記憶 焼け野原と泣け叫ぶ男 大地を焼き払わんばかりの業火 木々の燃える音と建物の崩れる音が支配し、人の声など一つを除いて聞こえはしない それが私のやったことだと気付くのには時間がかかった 放心してしまっていたからと言うのもある だけど一番の理由は、これが最も信じていた主からの命であったからだろうと思う 私は私の育った町をーー師と過ごした町ーー多くの兄弟子や一般人諸共焼き払ってしまった 「アイリス、客よ?」 と、リヴァルに呼ばれ意識を向けると気配の薄い魔法使いが立っていた 個人的には好感を持てる魔法使いだった 竹林に居候している魔法使いも好感を持てるが、若干違う パチェと同じで自分のためだけに魔法を突き詰める魔法使いには好感を持てる 逆に人の研究を邪魔するのは頂けないーー最も、霧雨はあれでいて努力家のうえ人間である 個人的には好きなタイプだ……人間としては 「えーっと……水無月?」 自然に呼び捨てになってしまった さして気にしていないようだけど…… 「……やっぱり小手調べなんて要らない 魔砲『トワイライトスパーク』!」 用件は分かっていても納得は行かない と言うより一言目がそれってどうなの 私は柄にもなく極大レーザーを避け、反撃に数本の剣を投げてやった 普段は相殺した方が楽だしやらないが、私はこう見えて空中側転が得意だ(タンブルっていうのかな?) 体感速度の魔法さえ使えばもっと動けるけど、あれはあれで負荷が大きい
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