謎の少年X

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「!!!??」 「なっ……!!?」 一瞬、目と脳を疑った。 私と辰本君は、頭や腹から溢れる自分の血を指で掬って舐めている少年を凝視している。 何で……生きてるの……!? 「ばっ……化け物……!?」 「あー、傷付くなぁ。 化け物呼ばわりは心外だよ」 何を言っているんだ? 頭を撃ち抜かれて平然としている奴を『化け物』と判断した私には何の非も無いに決まっている。 だって、有り得ない。 普通の人間だったら即死の筈だ。 仮に、頭部に弾丸を喰らってないとしても、あの出血量なら簡単に失血死に至るだろう。 なのに、コイツは…… 血塗れの少年は、ニヤリと悪戯な笑みを浮かべて、こう言った。 「僕は普通の人間だよ? 君と同じ……『前の世界で死んで能力を授かった』人間だ」 「っっっ!!?」 まさか……コイツも!? そうか、じゃあ頭を貫かれたのに死なないのは、それが少年の持つ能力だからか……! 勝てない、勝てるわけが無い。 急所を壊しても死なない相手と、どう戦えばいいんだ。 私は握っていたピストルを地面に落とし、油断すれば手放しそうな意識を繋ぎ止めていた。 「まっ、安心してよ。 イヌネコには借りがあるからね、君を食べるつもりは無いから。 僕はそろそろオサラバするよ」 「おい待て、お前……!」 隣で辰本君が何かを叫んでいる。 でも、私にはもう届かなかった。 極限の精神状態の中、微かに残る視界に映ったのは、私じゃなくて『私の隣』を見詰める少年。 「僕の生前のアダ名は、風迅。 また会おうね……『辰本龍』」 意識が飛ぶ直前に、少年の澄んだ声が聞こえたような気がした。
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