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「ハッロー、リュウ。
昼飯でも一緒にどうや?」
数分間、やり場の無い謎の怒りに苛々していると、この地区一帯を管理しているギルド支部長である九十九一が、門の前に座り込んでいる俺に歩み寄って来た。
コイツとはそこそこ長い付き合いだが……正直言って苦手だ。
何を考えているか分からないし、逆にこっちの考えを簡単に見透かせる洞察力を持っている。
だからか、こっちの世界でもすぐ出世したのは。
警察でもキャリア組だったしな。
「別に腹は減っとらん」
「嘘吐けー、その無駄な巨体にも胃袋くらい詰まってるやろ?」
コイツ、ブッ飛ばしてやろうか。
「……そういう気分ちゃう」
「そう自称病み期(笑)に突入した高校生みたいな発言しない。
あまり睡眠も摂ってへんやろ?
せめて栄養だけでも摂っとけ」
「…………」
やけに例えが具体的だな……っていうのは置いといて。
コイツもコイツで世話好きなのか余計な世話を焼きやがる。
こっちが拒否しようにも馬の耳になんとやらで、コイツを相手には主導権が全く握れない。
少しだけ付き合ってやるか……と思い、渋々腰を上げると。
「嶺子ちゃん、目覚ましたで」
「…………!?」
いきなりの発言だった。
あの女──犬飼嶺子は、風迅とのやり取りが終わった直後に、気を失って倒れた。
それからずっと眠っていたのだ。
無理も無い、あんな悲惨な現場を見てしまったのだから。
女子高生の心臓が耐えられる光景では無かった。
…………九十九、お前それもっと早く言えよ。
確実に昼飯より重要だろ。
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