辰本龍の憂鬱

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「あと……これは嶺子ちゃんには内緒にしといてほしいんやけど」 九十九はそう言って、人差し指を立てて『しー』のポーズをした。 何故かムカついた。 「捕まえたスモーカーズの幹部、自害しよったわ。 奥歯に毒を仕込んでたらしい」 「…………」 別に驚きはしなかった。 『その程度は平気でするだろうと予想していた』からだ。 スモーカーズという名は、九十九から何度か聞いていた。 実際に対峙したのは初めてだが。 情報としてしか知らなかった組織だったが、幹部という立ち位置とギルドに反するという大胆不敵な行動理念から、かなり巨大な組織なのだろうと考えていた。 だから、当然だと思う。 情報を多く保有している幹部が、情報保護のために自殺するのは。 「やれやれ、今まで捕まえた幹部3人ともに自害されてるわー。 また『マスター』怒るやろなぁ」 内心ざまぁな気分だった。 「……ええからさっさとあの女の話聞きに行くぞ。 俺は早く村を出たいんじゃ」 「えー、冷たいなぁ。 まぁええわ、んじゃ行こ」 正直、俺まで行く必要は全く無いわけなのだが。 九十九曰く「お前がおる方が落ち着くと思うよー」とのこと。 …………何故だろう、嫌な予感がひしひしとする。 今あの女に会ったら面倒なことになりそうな、そんな予感が。 10分後、その予感は的中する。
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