辰本龍の憂鬱

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  「────殺しても死なない?」 「はい……即死でもおかしくない筈だったんですけど……」 一通り、あの夜の惨劇に至るまで何があったのかを話し終えた。 後半は口に出すことすら恐ろしく感じたのだろう、自分で肩を抱き締めながら話していた。 度胸のある女だと思う。 目を背けたい事実から逃げずに、必死に受け止めようとしている。 コイツは馬鹿だけど、意外と思慮深い一面もあるようだ。 惨劇の一部始終を話し終えると、部屋に沈黙が訪れた。 九十九は顎に右手を添え、ジッと考え事をしている。 暫く話し掛けない方がいいな……と考えていると、九十九から先に俺に言葉を投げてきた。 「リュウ……その風迅って子供、お前を知ってる口振りやったって話にあったよな? 何か心当たりは無いんか?」 「…………いや、無い」 生前の俺は、人間関係が凄まじく極端に狭かった。 両親とすらコミュニケーションをまともに取れなかったんだ。 だから、過去に話したことがある人間は忘れない筈なんだが。 あんな一回り下のガキのことなど脳内の引き出しには無い。 だとしたら、何故? 何故アイツは俺を知っていた? 「ふーん……お前で分からんなら答えの出しようが無いな。 じゃあ『不死』については?」 「アレは風迅の『能力』じゃろ、てかそれ以外に考えられん」 「やろなぁ、でも『不死』なんて馬鹿げた能力あるんかなぁ?」 考えても考えても、それが憶測の域を出ることは無い。 話し合いは難所に乗り上げた。 ……その時、ほぼ空気だった女が恐る恐ると会話に入ってきた。 「ねぇ辰本君、具体的に『能力』ってどんな感じなの?」
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