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……俺は思った。
『説明するの面倒くせぇ』と。
説明放棄の意を眼差しで九十九に訴えかけると、九十九はウインクで返してきた。
交渉成立、でもムカつく。
「まず嶺子ちゃん、こっちの世界に飛ばされてから夢で『知らない誰かと会った』ことは?」
「えっ? えーと……」
暫く考えた後の、肯定の頷き。
3日も経たずに1度目の覚醒……かなり早いな。
「簡単に説明すると、その人物は『神様の代理人』や。
俺達みたいなイレギュラー全員に話し掛けて、突出した身体能力と固有の『能力』を与える。
覚醒は全部で3ステップあって、3度目の接触で『能力』を授かることが出来るんよ」
「神様の代理人(笑)」
笑うな。
真剣に話してる側で笑うな。
「どうやらその代理人は複数おるらしくて、何者なんかは多分誰も知らんことやと思う」
「へーそうですかーへー(笑)」
「……何でニヤニヤしてんの?
まぁええわ、じゃあ次は具体的な『能力』の例やけど──」
そう言って、九十九は──
『俺達の視界から消えた』。
「──これが俺の能力。
『百面相[シークレット・フェイス]』」
「わぁ!? いつの間に!?」
1秒後、九十九は俺達の『背後』に立っていた。
「人間の視界の盲点、心の隙間、ありとあらゆる『死角』を一瞬で見抜いて、潜り込む。
これが、おにーさんの『能力』」
笑顔で話す九十九とは対称的に、コイツはまだ驚いている様子。
まぁ初見だと無理も無いか。
九十九が能力を駆使すれば、敵の背後を瞬時に取ることも、感情や記憶を覗くことも出来る。
これがあると簡単に心を読まれてしまうから、厄介極まりない。
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