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「──まぁ、こんなもんかなぁ」
ようやく話し合いが終わった。
結果的に得られた情報など非常に微々たるもので、スモーカーズと風迅の動向を警戒する他に対抗策らしい対抗策など無かった。
「あのガキのことは、俺も道中で可能な限り探ってみる」
「任せるよ、リュウ。
スモーカーズの件は俺がギルド員集めて調査しとくわ」
俺1人が探ったところで、簡単に尻尾が見付かるとは思えないが。
試みるに越したことは無い。
九十九なら、同じ時間でも俺より遥かに多い情報を握れるだろう。
その点に関しては俺も信頼出来るところだし、認めている。
「じゃあ……コイツは任せた。
俺はすぐに村を出る」
「っ……!」
もう、村に居座る理由は無い。
この女だって、俺と旅をするよりギルドに属した方が良い。
安全を蹴って自ら危険に飛び込むなんて、馬鹿のすることだ。
……それに──
「…………じゃあの」
俺の目的は、誰かに助けてもらうものではないし、誰かを巻き込むべきものでもない。
自分勝手で、宙ぶらりんな願い。
会ったばかりの女に、そのお供をしてもらおうなんて思わない。
俺に仲間は……要らない。
「……たっ、辰本君!」
ノブに指を掛けたとき、後ろから声が聞こえた。
「その……色々とありがとう。
私、辰本君に会えて良かった!」
「…………」
返事はしなかった。
後ろを振り向きもしなかった。
感謝の言葉は素直に嬉しい。
でも、それだけだ。
今までも、これからも、俺は俺のためだけに生きる。
俺は扉を開け、部屋を後にした。
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