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…………かったんだが。
「──はーい、ストップー!」
いつの間にか扉の前に立っていた九十九が、行く手を阻んでいる。
そろそろキレるべきだろうか。
「……どけ、九十九。
もう話すことは無いぞ?」
「んー? いいんかなー?
ここで村を出たら、約束の1つも守られへん男になるよー?」
「ハァ? 何を言って……」
「お前にはまだ嶺子ちゃんと旅をする義務があるってこと」
………………
えっ?
「ハァァァ!!?」
「いや、だってそうやろ?
『寝泊まり出来る場所まで』って約束やったんやろ?」
その通りだよ。
だからこの村で約束は果たしたんじゃないか。
お前の中では村は寝泊まりの場に含まれないのか?
……しかし、次の九十九の発言は予想の遥か斜め上だった。
「支部長の決定事項でーす。
この村はギルド員の調査のため、外来者の滞在を拒否しまーす」
「……じゃあ今この場でギルドに加入させたらええじゃろ」
「リュウはアホの子か?
契約の手続きやらカード発行やら全部1日で終わるわけないやろ。
よって嶺子ちゃんはギルド員でもなければ、寝泊まり出来る場所に辿り着いてもおらへんね、残念」
「ハァ!? そんな独裁……!」
さすがにこれは文句を言わずにはいられない……と考えていると、九十九は俺の肩を掴み、俺だけに聞こえる声で呟いた。
「……お前は1人ちゃう、仲間は絶対にどっかに居る。
その意味が解ったとき、あの子はお前の支えになる筈や」
「…………」
「忘れんなよ?
俺はお前の味方や……ずっとな」
……結局、巧く言いくるめられて反論も出来なかった。
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